公聴会

博士後期課程公聴会 (伊藤 一陽)

日時
平成31年1月31日(木) 10:00-11:30
場所
フロンティア医工学センター B棟1階会議室
発表者
伊藤 一陽
題目
Evaluation of microscopic acoustic characteristics of diseased liver by ultra-high frequency ultrasound
(超高周波超音波による多種疾患の肝肝臓の微視的音響特性の評価)
主査
中川誠司 教授
副査
羽石秀昭 教授, 菅原路子 准教授, 山口匡 教授(指導教員)
外部審査委員
蜂屋弘之 教授(東京工業大学)
要旨
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)は,肝硬変や肝癌に進行する可能性が高いため早期診断が求められている疾患の一つであり,現在のゴールドスタンダードである肝生検に代わる技術として,侵襲性の無い超音波による確定診断法の実現が求められている.
本研究では,超音波像を構成するエコー信号が媒質である生体の音響特性を反映していることを考慮し,組織固有の音響特性を細胞単位で把握することで定量的かつ高精度にNASHの確定診断が可能ではないかと考え,臨床で使用している周波数(1~15 MHz)に比して高周波(60~500 MHz)の超音波を用いて各種肝疾患組織の音響特性を「組成」と「構造」の両面から高精度に評価し,病態鑑別の指標とすることを検討した.
肝臓の組成については,病態モデルマウスの摘出肝臓の音響インピーダンス評価,音速評価,およびガスクロマトグラフィ(GC)による肝臓内の脂肪酸分析を行い,脂肪酸種と音響特性との関係性を確認した.その結果を詳細に検討するために,GCで検出感度以上であった10種の脂肪酸について,溶液および脂肪酸処理を施したヒト肝細胞癌細胞の音響特性を解析した結果,各脂肪酸の分子構造と音響特性との関係性が見いだされ,特にNASHに特異的な脂肪酸について音響インピーダンスを指標として弁別可能であることを明らかにした.
また,評価対象組織の病理学的特性と音響学的特性との関係性について,方位分解能7 µmの精度で細胞小器官単位で検討した結果,細胞核,細胞質,および線維組織の音速が病態により異なることを確認した.