公聴会

博士後期課程公聴会 (倉田 智宏)

日時
平成29年1月16日(月) 15:30-17:00
場所
松韻会館 1F 会議室
発表者
倉田 智宏
題目
Proposal of intravascular oxygen saturation estimation method for microcirculation
主査
山口 匡 教授
副査
坪田 健一 教授,中口 俊哉 教授,羽石 秀昭 教授(指導教員)
要旨

微小循環は内径が100μm以下の血管の総称であり,血液中の酸素や栄養と組織の老廃物を交換する重要な領域である.微小循環を観察する方法として,Sidestream Dark-Field(SDF)イメージングが提唱されており,微小循環の血管構造や赤血球の流れる様子の動画像を撮影できるようになった.本研究では,SDF撮影法で取得した微小循環のバンド画像を用いた分光解析により血管ごとの酸素飽和度(SO2)を推定する方法の確立を目指した.SDF画像からの酸素飽和度推定法(SDFオキシメトリ)として,組織表面付近の血管を透過する光の振る舞いをLambert-Beer則でモデル化し,さらに照明のバンド幅とイメージングカメラの特性を考慮したヘモグロビンの光消滅係数の修正法を提案した.さらに,血管周辺の組織の散乱特性の影響を画像から補正する方法も提案した.推定法の評価実験として,(1) Monte Carlo光子伝播シミュレーションを用い,仮想SDF画像からのSO2推定を行った.この結果からSO2の正解値と推定値で強い相関を確認し,推定法の妥当性を確認した.また,光消滅係数の補正を行うことで推定誤差が10%以上低減することを確かめた.(2) 生体組織の光特性を模擬したファントムを用いて,SO2推定の散乱補正法の妥当性の検証を行った.散乱補正により誤差を最大21%低減することを確認し,補正法の有効性を確認した.(3) In vivoの動物実験では,SDFオキシメトリでSO2を推定して空間的なマップを作成し,微小循環での酸素輸送の様子を可視化した.細動脈と細静脈の別に対応した推定結果となった.この研究でSDFオキシメトリの実現可能性と微小循環の酸素輸送評価の可能性を示した.